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vol.14 駒井 梨沙

白生地を生かす匠

受け継がれる匠の技

vol.14 駒井 梨沙

防染の役割

糸目糊置きは友禅になくてはならない大切な工程です。作品の良し悪しは糸目で決まると言われるほどに、制作の要となっています。

青花で描かれた下絵の模様の輪郭に沿って、糊筒と呼ばれる、先に真鍮製の口金がついた道具で糊を置いていきます。この糊が防染の役目を担うことで、友禅の色つけがきれいに決まります。染料が輪郭の外に流れ出るととなりの色と交じり合ってしまい、あとの仕上りに支障をきたすのです。最終的には水洗でこの糊が洗い流され、糸目の線が白く浮かびあがります。

友禅染めの配色をより引き立てる効果とともに、きれいな糸目は、繊細で精緻な友禅染めを可能にしているのです。 伏せ糊置きもまた大切な防染工程です。地色を染める前に絵柄部分全体を糊で伏せ、上から挽き粉(おが屑)をまいて反物の付着を防ぎます。引き染の際、伏せ糊部分に隙があったり割れていたりすると、そこから染料が染み込んでしまいます。「防染」という工程には細やかな気遣いが必要なのです。

糊筒(上・糸目用渋紙筒、下・伏せ用セロハン筒)
伏せに使用する挽き粉(おが屑)

四代目を目指して

三代目になるお父様の駒井達夫氏は、糸目糊置き部門で京友禅伝統工芸士の認定を受けていらっしゃいます。駒井さんは幼い頃、工房で過ごすことが多かったそうで、お父様の仕事は常に身近にありました。WEBデザイナーとして働きながらも、どうしても家業の技術を継承していきたいとの強い思いが頭から離れず、思い切っての方向転換だったそうです。

その日から駒井さんは、とにかく糊筒を手にするよう心がけていらっしゃいます。どの世界でも同じでしょうが、きれいな糸目が置けるようになるまでには何年も何年もかかると言われています。求められるのは、均一な太さ(細さ)の描線です。心がけることは、筒を絞る指の圧と線を引くスピードを「一定に保つこと」とおっしゃいます。「一日休むと感覚が鈍ってしまう」とも。休日あけなどは、まず端裂に糸目を置き、感覚を確かめてから仕事にかかるのだそうです。それほどデリケートな加減操作が必要なようで、この世界の厳しさが窺えるお話です。

もち米で出来た伏せ糊
一定の力加減、速さで

見つめる先へ

工房の廊下に一枚の額がかけられています。三代目がゴム糸目だけで(!)描かれたという一羽のコンゴウインコの画です。その姿のよさに目を近づけると、羽毛の一本一本が極細の糸目で引かれています。白い描線の隙がくっきりと映え、羽の軽やかさが見事に表現されています。糊筒でここまでの線を引ける境地があるのです。駒井さんが見つめる先にはそんな高みが聳え立っています。

三代目制作のコンゴウインコ

駒井さんは、糸目糊置き・伏せ糊置きにとどまらず、友禅の加工全般に広く目を向けていらっしゃいます。挿し友禅、金彩、蒸しなど工房の中で作品を制作することがよくあるのだそうです。京都市産業技術研究所の手描き友禅プロコース(専科・本科2年)も修了され、友禅の制作工程全般を真摯に学んでいらっしゃいます。

糸目の曲線で荒波を表現した名古屋帯
「ソンブレロ」は令和元年度
京都市長賞・京都織物商業組合賞 受賞
銀通しの帯地に真白な糸目で鋭利な直線を描いた窓霜

ご使用の生地はコチラ

こちらの帯地に銀通しが入ったものをご使用いただきました

吹雪帯地

細やかな吹雪を地紋にした紋意匠の帯地。柔らかい光沢に特徴があり、発色もよい加工下向きの素材。ご使用生地は銀通し。

品番 / 7207UB0001

京友禅糸目糊置き・伏せ糊置き

駒井 梨沙

自宅の工房にて伝統工芸士の糊置き職人である父と祖母のもと、四代目を目指し見習いとして糸目・伏せ糊置きを従事。京手描友禅協同組合青年会や、産技研研修修了同窓生グループ 八花等に所属し、研修で学んだ技術を身につけるべく、総合加工にて作品制作にも取り組む。