伊と幸【職工部】発信!白生地の生地裏と向き合って織っています。
美しい伸びやかなな孔雀羽を表現した地紋様。特に人気の色無地です。
白生地の界切り(かいきり)といわれる、反物の入り口には、伊と幸製という小判マークを織り込んでいます。
さて、ちりめん産地の丹後。伊と幸の職工部より、生地の裏側から向き合う製織のことをご紹介します。
世の中には、何事にも表と裏があります。私たちの日常には、表と裏がつねに存在しています。
例えば、本も、表の表紙に裏表紙。外を歩けば、表通りに裏通り。昼の太陽に夜の月などなど。
私たちが取り扱っている白生地にも、また表と裏があります。
お客様のお手元では、生地の表に注目して頂けるよう反物を内表に巻いてあるため、表をメインにご覧いただいております。
しかし、生地の裏と向き合う時間が長い人々もいるのです。
織機を扱う私ども織手は、白生地の裏と向き合っている時間が長いのです。
なぜかというと、機(はた)にかかっている生地は、実は、裏側を見ながら、逆方向から製織しているからです。
特に縫取りと呼ばれる技法を用いた【伊と幸】マーク。界切り(かいきり)と呼ばれる、生地の反物の端部分にある、ブランドロゴは反転しています。
私は、織機を動かしていますが、やはり生地の裏側と向き合う時間が長いのです。
しかし、たとえ表と向き合う時間が短くとも、裏と向き合うことで、「表」を支えていると考えています。
売り場にあるときは「表」。機場にあるときは「裏」。まさに表裏一体の生活と同様に、白生地も「裏」から支えて「表」が出来上がっています。
美しい地紋の綺麗な生地。時に、その「裏」面もご覧になって下さい。
ここでは、紋意匠縮緬を例に取ってご案内しております。
紋意匠縮緬とは、横糸の地緯糸(じぬきいと)の上に、絵紋様を構成する絵緯糸(えぬきいと)を打ち込み、横糸が二重になる二重組織の織物で、生地表と生地裏がはっきりと異なります。
その絵緯糸を金色糸で織り込むものを、【金通し】と呼び、織上がりは全体に白っぽいのですが、染めますと、地組織にのみ染料が浸透し、金糸が浮き上がって見え、迫力のある反物になります。
若い方の振袖にも、この地紋を生かして無地染めで作られた色無地が使われたり、卒業式の袴姿にも、流用できる点が人気の理由かもしれません。
尚、白生地の中でも、一重組織の綸子など一部の組織においては、生地に裏表がなく、織表がそのまま生地表として内巻になる反物もあります。