それはまるで時が止まったかのような静寂

白生地を製織するための織機はいつもガタンガタンという音を響かせています。
その音は建物の外までも聞こえる程の大きさです。
織機が止まるとガタガタ音もなり止み、工房は時が止まったかのような静けさになります。
その静けさで、ちょっとした気づきを発見することもあります。
それは、間丁(けんちょう)と呼ばれる機の後方部で経糸に触れたときのことです。
音がなり止んだとき、いつもは聞こえない音が聞こえました。
微かに楽器の弦に触れたような音が聞こえたのです。
糸ってこんなに張力がかけられていたなんて…!

これは経糸に張力がかかっていることがうかがえます。
経糸には張力をかけるため重りが乗せられており、キロ数ごとに加減できます。
また、重りも2キロや4キロと種類も様々になっています。
そして、間丁が長いのは絹織物織機の特徴でもあります。
というのも、絹糸は伸度があるため長くしておくと織機が張力を調整してくれるようです。
たとえば、綿などは絹と比べると伸度がないため逆に間丁短くする必要があるようですね。
そうしないと糸が切れてしまう、という性質をもっています。

私は絹以外の織機を見たことがないため、どれほど短いのかは分かりません。
しかし、織機は使われる糸の特性に合わせて設計されていることが分かりました。
当たり前の音が聞こえなくなったとき、また何かに気づくことがあるかもしれませんね。
見習いの視点ですが、まだ気付けそうなことがありそうです。