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白生地を生かす匠

「サプライズのある着物」

vol.12 小谷 哲司

小谷さんは、京都室町に生まれ育ち、お父様の後を引き継がれた二代目で、悉皆屋(しっかいや)さんと呼ばれています。
お誂(あつらえ)の着物は、その道のプロフェッショナルが分業でつくりあげる豪華な作品です。
お客様のご意向を最大限に取り入れ、より良いご提案をし、作業工程を見極めて、最適最良のプロの職人さんたちに加工作業を配分し、頭の中にあるイメージと想いを見事に再現。
さらに、それ以上のものを創り上げるのが、小谷さんのお仕事。いうなれば、着物創りのプロデューサーです。

「伝統を受け継ぐ心」


「今の自分は、周りの職人さんに育ててもらった」と小谷さんはおっしゃいます。江戸時代から脈々と続く、ほんまもん(本物)の加工を知る京の職人さん。一癖も二癖もある一流の職人さん達に可愛がられたのも、小谷さんの人柄あってのことでしょう。

かつて、小谷さんのお父様が創られた振袖をヒントに、現代風に大胆にアレンジし直されたこの作品は、自身のお嬢様の成人式のために誂えられた入魂の作品です。弊社の棚に並んだ白生地の中に、この生地を見つけた時、頭の中に出来上がりのイメージが閃いたそうです。

陽光のもとで冴える光沢
あでやかな着姿

漆黒に染められた銀通しの生地は、小谷さんの言葉を借りれば「光をメラメラと反射して」太陽光の下で最も真価を発揮します。
歩くたびに動きに添って、人魚のウロコのように、濡れたような光沢を放つあでやかな着物は、生地の裏面を表に使用する斬新な発想によって生まれました。
あしらわれた大きな菊の金駒刺繍の綴じ糸は、なんと白。菊の花の豪華さと、上品さが際立つ素晴らしい演出です。
アールヌーボー風の唐草の糸目の先には、ガラスの粉を塗り、きらりと輝きをまとう線に。こういった、いろいろな隠し味や細やかな気配りが、小谷さんの真骨頂なのです。
磨き抜かれた感性(センス)から生まれる、誰も見たことのないサプライズのある着物。着る人はもちろん、見る人の心も魅了します。

アールヌーボーの曲線が美しい「北欧の乱菊」
目を奪う菊の花の存在感
繊細な陰影表現
珍しい白い綴じ糸の金駒刺繍

ご使用の生地と類似する素材

銀通し生地 銀砂子

銀の箔を粉にしたものを銀砂子と言いますが、生地の名の由来はそこからイメージされたものです。緯糸は絹糸と着色したポリエステル糸を撚り合わせたスリット糸。経糸には撚りの少ない糸を配し、上品な光沢を出しています。
品番 / 5111UB0005

小谷 哲司

平成元年 呉服店 神戸元町みよしや入社
平成六年 悉皆業 株式会社 小太仁 入社
平成十七年 悉皆業 染の古たにとして独立
令和元年 悉皆業 (株)千 に社名変更

604-0011
京都府京都市中京区冷泉町58-11