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白生地を生かす匠

刺繍の可能性

vol.16 村山刺繡店

創業は明治25年(1892年)という老舗です。初代村山金次郎氏が日本刺繍の職方として創業され、昭和34年には法人化されています。「昭和30年代、京都市内の最高級、手描き有名ブランド様から大口受注を頂戴し、それはそれは大忙し。縫い子さんを大勢抱えていましたが、その一人一人を正社員として大切に雇用すべきと考え、早くから法人化に踏み切り、今日に至ります。」
それから130年、父・村山昭治さんと並ぶ子息の4代目・村山裕俊さんは、朗らかで陽気、率直な語り口で、「自分の目が行き届く、この工房から今、刺繍でできるすべての可能性を追求します。」と、白生地からの自らのプロデュース力に自信を見せられます。

三代目から四代目へ

信頼の子弟関係がつなぐ刺繍技法

伝統工芸の職方工房としては珍しい椅子式の作業環境です。座卓に正座の姿勢より縫い子さんに優しい労働環境を提供されておられます。少しでも楽な姿勢で作業がはかどるようにと、温かい配慮のある空間で先輩から若い後輩へ、細やかな技術の伝承が進みます。
刺繍は着物の最後のお化粧です。これまでの友禅の彩色や金彩をさらに引き立て、立体感を持たせる役割です。椅子に座り刺繍枠に向かう縫い子さんの右手指先は、針を持ち、生地表から一刺し、刺し入れ、その針を持ち上げると、もう片方の左手は、生地裏へ回り、生地裏から糸のたるみを指先の感触だけで調整していきます。
生地裏を覗き込むこともなく、熟練の感覚だけで、糸の張り感を裏側で微調整しています。一針の糸の渡りが花びらの陰影を作り、絵画のように描いていく不思議な技術が日本刺繍です

珍しい椅子式の刺繍風景
ひと針ひと針に丹精を込めて

新しい取り組み、新たな挑戦

「社内正社員の縫い子がいるメリットを、最大限に生かして、村山刺繍を盛り上げていきたい」と4代目は語ります。
壁一面には、まちまちなサイズの刺繍台が整然と用意されています。
一般に、刺繍枠に作品Aを貼り込んで設定済みとなりますと、たとえ急ぎの作品Bがあっても、途中で刺繍台から外すことは不合理であり、Bに取りかかることは現実的ではありません。通常の刺繍職人は、Aが終わるまでお待ちください、となるわけです。
村山刺繍店では、Aと同時に、BもCも、工房スペースが許す限り、刺繍台をセットして同時並行で取り掛かることが可能です。「私は、従来の刺繍や染の垣根を超えた新しい感覚を求めるプロデューサーです。」という4代目は、白生地から着物のオリジナル完成品までを手掛け、受注されており、縫い子さんが選ぶ色糸の微妙な色目の違いや針目の動きに、持ち前の審美眼で的確に指示がなされていきます。
またさらに着物の生地巾38cmにこだわらず、刺繍台を改良して、有名デザイナーのブランドの広幅生地にも対応可能な環境となっており、刺繍でできるあらゆる可能性をアメーバー的にチャレンジしていくと胸を張られます。
祭礼や全国のお祭り、胴掛けなども意欲的に挑戦の意向です。写実的で精緻な日本刺繍から、盛り上げ刺繍(肉縫い)など、遠目に見て映える豪胆な技法まで、村山刺繍店は、「刺繍でできる全てに挑戦する」と未来に向かって進んでいます。

刺繍にかける熱い思い

ご使用の生地はコチラ

先練り五枚朱子 雲霞

先練五枚朱子 雲霞

光沢があり、染色して色映えのよい特徴があります。付け下げ、訪問着から振袖までと用途も広く人気の高いひと柄となっています。
品番 /
6104MK0092

日本刺繍

村山刺繡店

京都市北区紫野東御所田町5-1
TEL 075-451-2378
村山刺繍店WEBサイト>