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白生地を生かす匠

日本刺繍の技と美

vol.10 日本刺繍 武部 由紀子

日本工芸会正会員の武部由紀子さんは、もともと設計の仕事をされていました。今でもその経験が作品作りに大きく影響しているそうです。

武部さんの作品作りは、まず二週間かけてサンプルを作ることに始まります。全体のイメージ通りの下絵をCADに落とし込み、細かく修正していきます。そこから、生地の染色、糸の配色、糸の太さを決め、刺繍の工程に入ります。ひとつの作品を刺繍するだけで約二か月の日数がかかるのだそうです。

武部さんの作品の多くは、光と影や冷たさ、温かみなど人の視覚が感じる事を刺繍で表現されています。平面から立体に、直線から曲線へと創造的に美しく構成されています。

さまざまな表現を持つ日本刺繍の技法

作品名「あはひの空」は、令和元年の日本伝統工芸展で「奨励賞」を受賞された作品です。この作品でも建築設計の経験が生かされている構図で、直線的かつ奥行きがあり、刺繍だけで表現されています。武部さんの刺繍はすが繍いを基本としています。生地の緯糸(ぬきいと=横糸)に合わせて刺繍糸を重ねるように繍っていきます。仕上がりが細かく、立体的に見え、かつ美しいのが、すが繍いの特徴となります。

令和元年 日本伝統工芸展 奨励賞受賞作品 「あはひの空」
直線だけで動きのある紋様を
僅かな色の違いが生むグラデーション

作品名「南フランスの聖堂で」は『ル・トロネ』という修道院をイメージしていると聞きました。淡い黄色の暈しの生地に、直線と曲線で作品の構成をされています。聖堂の中のロマネスク様式のアーチ状の天井、ステンドグラスから入る陽の光、時の静寂を感じる淡い黄色、全てシンプルに刺繍だけで表現されているのは『さすが!』の一言につきます。

「南フランスの聖堂で」
視覚に訴える光と影の表現
縫い糸の組み合わせで表情豊かに

ご使用いただいた生地はコチラ

5401OS0001_錦裳一号13M

錦裳一号

右撚りと左撚りの強撚糸の間に撚りの違う糸を加えることで、縮もうとする力が緩和され、縮みにくい縮緬ができます。
錦裳1号は加工下としてはもちろんのこと、色無地や喪服等、幅広い使用が可能な無地生地です。
品番 / 5401OS0001

日本刺繍 武部 由紀子

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